……しばらく会話して分かった事がある。
第一王子のラデーニはこのイッカ国の正式な跡取りで、絵に描いたような若き王であるという事。
IQ・EQ等能力などは他の世界の王と比較すると、平均よりちょい上と言ったとこだろう。
性格は温和そうではあるんで、国の民視点としては安泰といったところか。
対して王妃はずっと黙っているので情報はくみ取れず、性格等正直よく分からない。
(分かっているのは辛抱強いという事、それにもの凄く賢しこそう)
理由としてはなんというか温和そうで気品があるし、ベラベラ余計な事を喋ったりしないから。
更には一国の王女となると、権力持ちになり多少なりとも気が大きくなるもの。
が、この方からはそんな気配は微塵とも感じとれないのだ。
ちなみに王女のラグシカの姓、このイッカ国の弱小貴族らしいので事前に耳に入れておいた政略結婚説は濃厚である。
(この方、もしかしたら誰か別に好きな人がいるんじゃ?)
というのも、やや悲壮感漂う雰囲気がアレニー王妃から見え隠れしている。
(小次狼さんはどう思う?)
私は、出入口付近で静かに立ったまま佇んでいる小次狼さんに、静かに秘密のジェスチャーとアイコンタクトを送る。
すると、小次狼さんはそうだと言わんばかりに深く頷く。
ちな、今回は小次狼さんは私のサポート役なんで、見張りも含めて出入口付近に待機して貰っているわけです。
これらの役割なんだけど会話の相性次第で当然変わるわけです、ハイ。
「あ、では頼まれていたアクセサリーをお渡ししたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、これは気が付かなくて申し訳ない。えっと、出来たら詳しい説明を含めよろしくお願いしたいかな」
「ええ、かしこまりました……」
私は営業スマイルと共に軽く会釈し、懐から取り出した宝石入れの装飾小箱をテーブルにそっと置く。
対してラデーニ王子も説明を聞く為に、私の対面に移動し腰かける。
「ええっ! なにこれ……。凄い……」
すると驚いた事に、今まで反応が薄かったアレニー王妃が急ぎ足でこちらに向い、ラデーニ王子の横に腰かけたのだ。
(ええ? なにこの反応? うーん、ま、まあ女性だからね?)
うっとりとした恍惚の表情で宝石入れの装飾小箱を見つめるアレニー王妃……。
ちなみにこの宝石入れの小箱、片手で掴める大きさでかつ金の装飾が施されている。
装飾はたまたまアデニーの葉にしてあるけど。
なお宝石箱の天井は透明なガラスにしており、中が見える仕様にしてある。
その中には真紅の絹の布地の上に、そっと指輪が仲良く並んでいるのが見えるオシャレ仕様だ。
私はこの時、この指輪を見つめるアレニー王妃の目線を素早く追っていた。
(……宝石箱、特にアデニーの葉の装飾を見ている……? しかも何故かとても嬉しそう?)
「あの、この宝石箱のデザインはどちらがされたんですか?」
「私です。丁度この城内に飾っているアデニーと同じだったので今喜んでいるところですね」
何にせよ、王妃がこれだけ指輪に、いやアデニーに興味を示しているのは気になる。
だからこそ、私は慎重に言葉を選びながら王妃に向かって次の言葉を放つのだ。
「あの少し気になったので教えて欲しいのですが、この城内に沢山飾ってあったアデニーはどなたが頼まれたんですか?」
「えっ? あ、頼んだのはシュレンダー第二王子です!」
今までとはうって変わり、向日葵が作が如くの明るい表情になるアレニー王妃。
その嬉しさが分るように、声のトーンが数段上がっているのも分かるくらいだ。
(ああ、私の嫌な予感が的中してしまった……)
私はそんな事を考えながら、先程と同じジェスチャーを小次狼さんに送る。
それに対し小次狼さんは、自然体で腕組みし静かに目を閉じていた。
この小次狼さんの様子、実は私達の隠しサインになっていて、【確信をついていることに賛同する】という内容になる。
商談相手に知られたくないときに使う、隠しサインだ。
この感じだと、アレニー王妃が好きな相手はシュレンダー第二王子が濃厚だ。
(で、でもまだ予想の段階なので、色々と会話を詰める必要がありそうね)
「こ、これは見事な真紅の魔石! 早速だけど手に取ってもいいかな?」
「勿論ですとも、どうぞどうぞ……」
私の考えをよそに嬉しそうに二つの指輪を眺めていくラデーニ第一王子。
(……正直、良心が痛い)
何故なら、ラデーニ第一王子の王妃に対する思い対し、アレニー王妃の心はここには無いのだから……。
「……これ、もしかしてシュレンダー第二王子からの贈り物ですか?」
対してアレニー王妃は、何故か心底嬉しそうにその指輪を見つめ私に話かける。
「そうですね……。ところで王妃は何故そうお考えに……?」
「え? いや、デザインの頼み方があの方らしいなって……」
(ああ、これはもう、ほぼ確定かな)
とても楽しそうに笑うアレニー王妃、更には変わらず自然体で腕組みし目を閉じている小次狼さんの姿を見て、私は流石に少し頬を緩めてしまうのでした……。
そんなこんなで、私はすっかり打ち解けた王妃と積極的に会話を続けていき、リングのサイズやら、保存の仕方などなど聞かれた事に対し柔軟な対応をしていく。
「この指輪の魔石に刻まれた印章はもしかして?」
「ええ、このイッカ国のシンボルであるサーベルタイガーになります。なお魔石である為、当然マジックリングになっておりまして……」
そう、イッカ国では王族が婚姻する時、必ずこのサーベルタイガーの印章が刻まれた宝石の指輪をつける習わしがある。
純銀の装飾リングの中央で真紅の眩い輝きを放つ4カラットの大粒の魔石。
楕円形状の魔石の天井であるファーブルファセットの部分に刻まれたサーベルタイガーの印章は光輝なる王族が身に着けるのに相応しい。
「そうですか、説明ありがとうございます! 効果は知っているので大丈夫です!」
王妃はそのリングを片手に乗せ軽く転ばせながら、何故だか嬉しそうに微笑んでいる。
(……あ、あれ? この結婚乗り気じゃないと思ってたのだけど?)
私は先程とは全く違う反応を示すその王妃の態度に心の中では首を思いっきり捻っている状態でした。
(え、ええと、小次狼さんの考えはどうなんだろうか?)
小次狼さんの姿を見ると、少し眉を潜めかつ自身の首に手を当てその首を捻っていた。
これは第三者から見たら、首のストレッチをしているように見える。
が、実はこれも私達の隠しサインで【自分はそうは思わない】というジェスチャーになる。
(えっと、じゃあ小次狼さんは王妃が第二王子と愛し合っていると?)
私は再びジェスチャーを送りそれを確認する。
すると再び自然体で腕組みし、目を閉じる小次狼さん。
(ええっ! う、うーん? じゃあ少し整理してみようかな。先程王妃が喜んでいたのは、マジックリングそのものではなく、あっ!)
私はリングを見ていた王妃の目線を再び追う。
そしてある事に気が付いてしまい、顔が真っ青になるのが自分でも分ってしまう。
(それにこの部屋に飾っている紫の花……! こ、こうしてはいられない!)
「あ、あのすいません、あらかた説明も終わりましたが、もうよろしいでしょうか?」
私はあえて若干もじもじする。
「あっ、ああ! すいません気が付かなくて! もう説明は十分ですよ」
「あ、ありがとうございます! では失礼します! 出来れば今後とも御贔屓に!」
私達は脱兎のごとく逃げるように、王子達の控え部屋を出ていく。
「こちらこそ、あ、お手洗いは部屋から出てすぐ右の部屋ですよ!」
「す、すいません、助かります!」
そう、私は「お手洗いに行きたいから敢えてもじもじした」のだ。
多少演技は入っているものの、先程頂いた白ワインで若干催してきた事実がある。
王妃様は聡い方なので、申し訳ないが逆にそれを利用させてもらった。
とても恥ずかしい演技ではあるが、緊急にあの部屋を出る必要があったので止む無しである。
私はお手洗いを終え、回廊を歩きながら小次狼さんと小声で話していく。
「小次狼さん!」
「うむ、困ったことになったのお……」
「ごめんね、巻き込んでしまって」
「いや、まあこの依頼を受けたのはそもそも儂じゃしのお……」
何故こんな話をしているのか?
それはあの部屋に飾っている花が【紫色のヘリオトロープ】だった事に私達が気が付いてしまったから。
……そんなこんなで数か月がたったある日、ここはイハールの屋敷のとある作業部屋。 あきらかに私の作業部屋よりも広くいろんな道具が揃っているこの場所は、今では私達の新しい作業部屋になっていた。 木目の作業机の上には片手ハンマーやピンセント、宝石や魔石を研磨する道具などが置かれているのが散見される。「クロウ、これどう?」「うーん、形はいいですけどあまり魔力は含まれてませんね……。明らかに2級品の魔石です」 クロウは残念と言わんばかりに深いため息をつく。「うーん、じゃ、次これは?」 作業エプロンを着た私とクロウは仲良く横並びに座り、魔石の仕分け作業を黙々とこなしている最中だったりする。「失礼します!」「嬢ちゃん達帰ったぞい!」 そんな最中、部屋に響き渡るはドアを開けし、聞き慣れし2名の声!「待ってました!」「2人ともいいの取れました?」「ほっほっほ!」「ふふ……」 不敵な笑いを浮かべながら、背に背負っていた大きめのリュックをえいやっと地面におろす小次狼さんとドラグネオン。「ほれ! どうじゃ!」 小次狼さん達がリユックから取り出した握りこぶし大の魔石の原石達。 形は歪であるものの、それはまるで太陽の如く真っ赤に輝いていたのだ!「な、なんて、す、凄い量のマナ……!」 クロウは感激のあまり思わず席を立ちあがり、目を輝かせている模様。「立派なもんじゃろ? それらはドラグネオン殿が全て探知してくれたものなんじゃよ」「へ、へえええ……?」 私は真紅に輝くそれらを値踏みしながら、どんな細工品にしようか頭を巡らせていた。「そっか、ドラグネオンは雷のマナの扱いにに長けているから! 体力もありますし、一流の採掘屋として活躍できてるじゃないですか! 凄いです!」「そ、そうなのだが私
……という事で、それから数時間後。 ここは例のブリガンの肉料理屋さん。「いやあ、あの時の小次狼殿の刀技は見事でしたな……」「いやいや、ドラグネオン殿の剣技こそ見事なものでしたぞ!」 それぞれ服装を整えた私達は、各自好物の肉を美味しくいただきながら木椅子に腰かけ、談話していた。「まあ、なにはともあれめでたしよね……」「そうじゃな」「ですね……」「うむ」 私達は各自ビールを飲み干し、そっとテーブルにマグカップ置く。「あっ! ところでイハールさんの件は?」「ああ、それはイミテーションブルーが次の満月に『魂の入れ替えの儀式』がレクチャーしてくれるらいよ?」「な、なるほど! 例の隠し部屋の本にもそれらしきものが色々ありましたね!」 クロウは満面の笑みを浮かべ、コクコクと頷いてますが……。「クロウ、やはり貴方……」「……え、ち、違いますよ? そ、そんなんじゃないんですって!」 クロウはその可愛らしい顔を赤み肉より真っ赤にし、目を躍らせ慌てふためいているが……。(なんというかその、分かりやすいよね……) クロウの場合、仕事でも繋がりが深かったし色々惹かれるところがあったんでしょう。「……ね、ね! クロウは青年のどんなところに惹かれたの?」 私はクロウの顔を覗き込き、すっかり赤くなっているその頬をツンツンとつついてみる。「ち、ちがっ! あ、そ、それよりもリッチー=アガンドラがいなくなった今、組織はどうしましょうか?」「え? そりゃ、私はもう関係者ではないんだし、貴方達上位幹部が好きに決めたらいいんじゃない?」「……そうはいかない。と
「う、うわあああああああああああああ……! い、嫌だっ! 我はまだ死っ……」 リッチー=アガンドラはあっという間に燃え上がり、たまらず絶叫を上げのたうちまわっていますが……?「え、ええっ! ち、ちょっと本当に大丈夫なのこれ?」 そんな私の心配をよそに、紅蓮の炎が消えてなくなったそこには仰向けに倒れているブラッド青年の姿が見えた。『な、大丈夫だろ? ユグドラのマナがフェニックスの力を借りてリッチー=アガンドラの魂を浄化しただけだしな』 なるほど、確かに何故か青年の服は燃えていないし、これには納得せざるを得ない。(それはそうとして、問題はここからどうやって逃げ出すかよね……) というのも、リッチー=アガンドラを滅した事により、奴の作り出した虚実空間から現実世界に戻ってこれたのはいい。 けど問題はここがエターナルアザーの本物の訓練部屋であるという事実。 早い話、奴の部下が大量にいるだろうし、まだ油断が出来ない状態であるからだ。『なあに大丈夫、今の君なら私を通してまだ魔法が使える状態にある。それがどういう事が聡い君なら分るよね?』『あっ! なるほど……!』 て事で、謎の力が満ちている私はブラッド青年を軽く背負う。『じゃ、後の詠唱はお願いね!』『心得た』 再び私の体を借りたイミテーションブルーはレッドニードルに残ったマナを使用し、高速詠唱テレポートを唱え、あっという間にブラッド青年の部屋に無事舞い戻る事になる。「あ、きたきた! やっぱり無事でしたね!」 意識と視界が戻ると同時に、聞き慣れた元気な声が正面から聞こえてくる。 彼女は人懐っこいワン公のような笑みを浮かべ、私に向かって歩んできた。 大きな垂れ目に流れるような黒毛、うん、間違いなくクロウだろう。「ふむ、流石嬢ちゃんとと言いたいとこじゃが、儂の方が早かったの?」
『これで色んな準備は整った。後は私が言う通りにするんだレイシャ』『え、私が?』『そう、これでまたレッドニードルに血液を捧げれるだろ?』 『……あ、ああ、なるほど!』 そんな会話をしている間にリッチー=アガンドラはなにやら高速詠唱を唱えているが?「う、ううっ! な、何故だっ! 何故私の呪文が発動しない? ま、まさか? 今の血を吸ったのは……」「ご名答、なんせお前は転移魔法が使えるからな。血を吸うついでに少しマナの回路をいじって呪文の発動を封印させてもらった!」「く、くそっ! くそおおおっ!」 悔しさのあまりリッチー=アガンドラは己の両手の拳を力強く握りしめ、声を張り上げ叫ぶ!(あ、そっか! 奴に逃げられたらブラッド青年の体を取り戻せないもんね) 流石長、一手で相手の複数の行動を制限し、かつこちらに凄い有利な状況を作ったし、やる事が凄い。 で、体の主導権が私に戻ってきたので、早速だけど早々に決めさせていただく!「私の血を吸いなさいレッドニードル!」 私の言葉に反応し、胸元のペンダントは真紅の輝きを放つ! で、いつものように手に持っていたレッドニードルの柄の部分から、まるでバラのツタのようなものが発生し、それらは蠢きながら私の腕に巻き付いていく!「つ……!」 分かってはいるけど相変わらずこの感触と痛みには慣れない。 『で、ここからどうするの長?』『これで君が呪文を使える状況は整った! 後は私の言葉を追って呪文を詠唱してくれ!』『うん、分ったわ!』『聖なる大樹よ。我が声に応え、そのマナをこのレッドニードルに納めたまえ!』 私はレッドニードルを自身の胸元にそっと携え、イミテーションブルーの後追い詠唱を始める。 「聖なる大樹よ。我が声に応え、そのマナをこのレッドニードルに納めたまえ!」 すると私の声に応え、不思議な事にレッドニードルの刀身が鈍
「クククク、どうやら術が完成したようだ。どうやらこの勝負、私の勝利のようだ! さらばだレイシャ!」 リッチー=アガンドラは不敵な笑みを浮かべ高笑いをしている。「いでよ絶対零度の支配者にして、氷の女王よ! そなたの力を持ってして我が敵を氷塊と化せ!」 リッチー=アガンドラの額のサークレットから力ある言葉が放たれ、私の目の前に全身氷のマナで覆われた『氷の女王』が顕現する! 見た目は透き通った華麗な氷の貴婦人……。 だが、それはまごうことなき死の代弁者。 その氷の女王は残酷なまでの冷笑を浮かべ、私に向かって静々と歩き静かに『死の息吹』を吹きかけたのだ……。(さ、寒い! いや、そんな感覚すらも生ぬるいこの冷たさ……) 私は遠くなっていく意識の中で、咄嗟に例のメモ紙を懐から取り出し静かに握りしめる!「……ふふ、ふふははは! レイシャよ! 流石に絶対零度の死の息吹の前ではなすすべなしであろう!」 リッチー=アガンドラの嘲笑が響き渡る中、パキリ……と何かが壊れる生々しい音が私には聞こえた気がした。「……ははは、は、はあっ?」 リッチー=アガンドラの嘲笑はピタリと止み、今度は目を大きく見開き驚いている模様。 そう、奴が驚くのも無理もない。 私は肌の表皮が少し凍っただけで、ほほ無傷の状態で何事も無いように立っていたからだ。「ば、ばかな? 何故、何故我の最高の氷魔法を食らってお前は無事でいられるんだ? 貴様っ!」「……それはこれのおかげ」 私は手に持っていたメモ紙を開き、奴にそれを見せる。「女神の姿を形どった銀の指輪っ! しかも虹色の魔石が埋まっているだとっ! ま、まさかそれは……?」「そのまさか、超希少アイテム『身代わりの女神の指輪』よ……
「ふふ、これで良しと……」 よく見ると額に青い魔石のサークレットを身に着けている。 リッチー=アガンドラは無駄を嫌う冷静な軍師タイプ。 だからこの行動にも絶対に意味はあるはず!『長ッ、ちょっとあれは何?』『まずいな……。あれはリッチー=アガンドラの隠し玉の1つ、「零口のサークレット」だ』『ええっ! ど、どんなアイテムなの?』『結論から言うと、呪文を2つ同時詠唱出来るようになる壊れアイテムだ。詳しく説明すると、もう1つの意思を持ったリッチー=アガンドラの口が出来たわけだ』 『ええっ! で、でもそんな神アイテムがあるなら何故はやく使わなかったんだろう?』『あれは希少な消耗アイテムで、奴のお気に入りのコレクションなのだ。あれを使わせたという事はレイシャが奴を追い詰めている証拠さ』『なるほど、ポジティブ思考でいくとそうなるわね! じゃ、そうとわかればトドメを差しにいかないとね!』 私は再び呪文を詠唱していくリッチー=アガンドラに向かって、容赦ない斬撃を繰り出す! ……なるほど、リッチー=アガンドラの周囲を覆う水色に光る魔法防御壁が次第に薄くなってきている!「もう貴方の魔力も尽き欠けているわ! 観念しなさい! リッチー=アガンドラっ!」「く、ぐうっ! 魔法の完成はまだかっ!」 声からもリッチー=アガンドラが狼狽えているのが分る。(そっか、オートで自立して魔法を唱えるアイテムだからリッチー=アガンドラ自体もいつ何の魔法が完成するかわかんないんだ! それに本体は魔法防御で手いっぱいなのかも) となれば、今が絶好の機会っ!「も、燃えよ! レッドニードルっ!」 私はふらつきながらも気合を入れ高らかに叫び、力強くレッドニードルを握りリッチー=アガンドラに斬りかかっていく!(……よくよく考えると、このレッドニードルって不思議よね。そしてこの刀身に宿る炎のエネルギーって、